人工呼吸器の思い出〜かつては医療機器メーカーの営業マンでした〜

生活

骨盤矯正と姿勢改善が得意なカイロプラクター 伊東稔(@MinoruITO66)です。

かつて会社員でした。
医療機器メーカーの営業をしていました。
取り扱い品目が多すぎて、総合カタログの中でも売ったことがない物の方が多いぐらいです。

心電計や脳波系、血球係数器などの検査機器
パルスオキシメーター
病棟の心電図や血圧のモニター
心臓のペースメーカー
人工呼吸器
除細動器
高規格救急車やドクターヘリに搭載されるモニター類

など取り扱い製品は多岐に渡ります。

ざっくり分類すると以下の通りです。
・検査機器
・観察機器
・治療機器
・その他

何が売れるかは、営業所のテリトリー内での伝統(先輩がたくさん売っていたものは後輩も売りやすい)、営業担当者の得意不得意で大きく左右されます。

メーカーですが、不得意な分野や取り扱っていない分野のものは海外の輸入品を取り扱います。

日本では命に直結する治療機器の開発が遅れているのか、ペースメーカーと人工呼吸器はほぼ輸入品でした。ドイツ製、アメリカ製が多かったように記憶しています。

新型コロナの影響で、ちらほらと「人工呼吸器」のことが新聞やネットニュースでも見かけるようになりましたよね。

アメリカでは「国防生産法」の発動で、人工呼吸器を自動車メーカーなどにも作らせて、あっという間に重要輸出品にしてしまうということができてしまうのが素晴らしいと思います。

もう20年も前のことなので、さらりと聞き流してもらいたいのですが、思い出が蘇ってきたので備忘録的に綴ります。

人工呼吸器って高いんですよ。
高級外車が買えるぐらいの物なんて、ごく普通です。

漢字でたった5文字の機械ですが、「外せば死ぬ」という機械なんですよ。
ただ人工的にブオーっと空気を送るのではなく、人体の動きに合わせてセンサーが働いて、自発呼吸があれば空気を送らない、設定時間通りに自発呼吸がなければ空気を送る、その送る空気もできるだけ自発呼吸に近い速度と量にするなど、めちゃくちゃ多くの設定項目があるんです。

そしてメーカーごとに得意とする機能が違っていたりして、それはそれは「難しい」というのが当時の、営業をしていての私の感想です。

医師の数だけ得意分野が違うと思いますが、人工呼吸器が好きな先生も数少ないながら存在します。おしなべて人工呼吸器が好きな先生は、他の医療機器も好きなので、「世界で初めての機能」などを説明するだけで笑顔を見せてくれたものです。

言い方がいいか悪いか分かりませんが、「医療機器オタク」な先生は、医療機器メーカーと相思相愛です(笑)

でも売れるかどうかは別の話なんです。
医師が個人的に購入するのではなく、病院の予算や補助金の兼ね合いがあるので、「申請する」のが先生にしてもらうことです。

突発的な出来事もあります。
機械なので、どこかのタイミングで故障をすることがあります。メンテナンス契約をして、定期的なメンテナンスをしていても故障はつきものです。

競合他社のものが故障した時、競合他社に代替機があればいいのですが、なければお声がかかることがあります。タイミングというビジネスチャンス到来です。恩着せがましく貸し出しをして、次回の予算申請時に購入してもらうチャンスになります。
(そうそううまくいきませんが…)

何百もの製品を扱っている会社の、地方の営業所になんて人工呼吸器の予備が何台もあるわけがありません。小型冷蔵庫ぐらいの大きさで2000万円もするようなものがゴロゴロとあったら、紛失したら切腹ものです(20年ほど前は、まだ切腹の習慣がある時代でした(笑))。

今、新型コロナの蔓延で、最前線の医師や看護師の活躍が多く報道されています。通常の医療行為に加えて、新型コロナの対応が増えたわけですから、とても大変だと思います。

医師や看護師が見える場所での奮闘だとしたら、見えないところでは臨床工学技士が医療機器のメンテナンスをし、いつでも最高のコンディションで使えるようにしています。

人工呼吸器の稼働率が高くなればなるほど、臨床工学技士とメーカーの奮闘にも光が当たってくることでしょう。

医療ドラマなどでは、簡単に「人工呼吸器用意して〜!」と済ませていますが、患者さんに装着する前までの準備や点検はとても大変なんです。そして、感染症を防ぐために、使い捨てのパーツも発生します。このパーツが一つ足りないだけでも使えなくなるのですから、シビアな物です。

メーカーとしては「適度な在庫を持ってもらいたい」と願うのですが、なかなか難しいです。

「緊急事態発生!なんとか協力してもらえないか?」と病院からメーカーに声がかかれば、できる限りのことはしてあげたいのですが、「モノが無い」「お金がかかる」「近い将来の売り上げにつながるかならないか」などの要因でできることとできないことがあります。

貸し出すにしても、人工呼吸器なんていつ外れるか分からないので簡単には引き上げられません。

とある病院では、長期に渡り貸し出しをしていたら、いつの間にか病院の在庫シールが貼られていたなんて笑い話もあります。

「あんた、いつ金払ったんや!」と言いたくなったこともあります。
前任者の前任者が、うやむやにしたモノってありますよね。

何台も売ったわけではありませんが、人工呼吸器の5文字を見るたびに、「医療機器の営業やってたんだよなぁ」と懐かしくなる今日この頃です。

※ここに出てきた内容は、1995年前後のとある地方の出来事です。今はもっとメーカーと病院の関係もしっかりした物になっていると思います。

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伊東 稔

伊東稔/Minoru ITO 骨盤矯正と姿勢改善の専門家 カイロプラクティック伊東(長野市)院長 兼業主夫でもあり料理好き 『ねこ背を治す教科書』著者 http://amzn.to/2qB9VS2

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