時々ではあるが、大繁盛している友人のレストランでアルバイトさんの数が足りない時にお手伝いに行っている。子どもの頃に憧れた、飲食店の「中の人」に近づけるので、行くたびにワクワクする。基本的に洗い物担当なのだが、超繁忙期には調理補助もやらせてもらい、ワクワク感が最高潮になる。先日なんかサラダの仕込みが間に合わない場面に出くわして、野菜のカットをやらせてもらった。ワクワク感いっぱいでレストランの「中の人」になっているので、「やらされた」ではなく「やらせてもらった」と表現する私の気持ちをお察しください。嬉しいの一言である。
こう見えても料理が好きで、野菜のカットぐらいなら目をつぶっていてもできると自認する。もちろんお店の味、店主のこだわりがあるだろうから、最初だけお手本を見せてもらってからやらせてもらった。サニーレタスの捨てる部分、カットする大きさを確認し、お店の包丁でスパッとやった瞬間に、包丁の切れ味にビックリした。
プロの料理人が使う包丁とは言え、この切れ味は私が家庭で使っているものとは別次元のモノだと感じた。
目次
包丁を研ぐ
砥石は持っている。テレビでプロの研ぎ師がやっているのを真似てやってみるが、それが正しいやり方なのかどうか知る由もない。研いだ後、「こんなものだろうな」ぐらいに思っていた。やや疑問を持ちながら、である。ホームセンターで売っている「誰でも簡単に」刃物を研ぐことができるグッズも買って試してみた。軽く手前に引くだけで包丁もハサミも研げるのだ。ジャー!ジャー!ジャー!と数回、手前に引くだけであるので、本当に誰でも簡単にできるのである。
研ぐたびに思うが、レストランの厨房で触らせてもらった包丁の切れ味とは天と地の差がある。ひょっとしたら、包丁自体が違うから仕方がないのか?とすら思うが、家庭用で趣味程度に使う包丁に数万円もかけてはいられないので、「研ぎ方が悪い」と信じ込もうとする私であった。
「私であった」である。
プロに依頼する
10年も15年も前だと思う。
「包丁研ぎやってます。切れない包丁ありませんか?」と訪問営業してきた職人さんがいた。A5ぐらいの紙に手書きのパンフレット的な紙を持ってきた。元寿司職人だという。一度だけお願いして、確か「さすがはプロだねえ」と、切れ味に驚いた記憶があるが、その手書きのパンフレット的な紙を紛失してしまったので、それっきりである。今も元寿司職人のおじちゃんは包丁研ぎの仕事をしているのだろうか?
ググる
探し物をするときには、スマホでググるに限る。「長野市 包丁研ぎ」で数件出てきた。すぐにうちからほど近いホームセンターに行く。サービスカウンターで「包丁研ぎのサービスはどちらで申し込みでしょうか?」と尋ねたら、お若い店員さんが「噂なんですけど、包丁を研ぐ人が体調を崩してしまって、今は受け付けていないんですよ。」と噂話を聞かされた。れっきとした店員さんが客に向かって「噂なんですが」の枕詞からスタートするなんてあり得ない接客である。まあ親しみを込めてそのような言い方をしたのだろうとポジティブに思うことにした。
金物店に行く
便利なホームセンターであるが、包丁を研ぐ人が体調を崩しているのならば仕方がない。同じ長野市ではあるが、いわゆる「川向こう」と呼ばれる遠方のお店に出向いた。持参したのはしばらく使っていなかった錆びがひどい菜切包丁と、いつも使っている三徳包丁だ。
いかにも職人さん風な店の方に二本を託し、前払いで受け付けをしてきた。一本が540円と、想像を絶する安さである。1週間ほどかかるとのことで、出来上がり次第電話をいただけるそうだ。
仕上がった
5日後に連絡をもらい引き取りに行った。家に着いてから研ぎ具合を見たら、別物のようにピカピカになっていた。
刃先をスッと触ってみたら、スッパリ切れることがすぐに分かった。これ以上ないぐらい切れ味が分かった。そう。少しも力を入れずに包丁をスライドさせただけで左手親指の腹をエグってしまったのである。切った瞬間は痛くも痒くもない。一瞬ではあるが、「よかった。皮だけが切れたんだな。気をつけようっと。」と思えたが、さにあらず。ジワーッと出血してきた。少々なめても止まらないレベルの出血である。チューチューと吸い続けるが、鉄っぽい味が口中に広がるだけで、口を話すと鮮血がドクドクと湧いてくる。
2箇所のテーピングで止血
指先の負傷である。心臓に近い関節にテーピングをして止血しようと、商売道具に手を出す。キネシオテーピングは日本のカイロプラクティックの先生が開発したスグレモノであるが、止血にもうってつけのテーピングである。手首と左手親指の付け根の2箇所にキュッと巻き、左手だけ挙手したまま5分ほど経過したらとりあえず止血できた。
まとめ
時々はプロに包丁を研いでもらうと、気持ちよく料理ができる(だろう)。まだ指の切れ味しか試していないので、その切れ味、そして料理の味にどう影響するかを早く試したいものである。
伊東 稔
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