二つの勘違いから生まれた「紫陽花」という漢字

生活

冬の間は枯れ木のようにひっそりとしていた紫陽花(アジサイ)も、5月の下旬になってくると青々と葉を茂らせ、長野県長野市の我が家でも蕾(つぼみ)が出てきました。

我が家のアジサイのつぼみの写真

【紫陽花をアジサイと読むのが不思議】

「紫陽花」と書いて「アジサイ」と読みますが、当て字にもなっていないし、不思議に思っていました。
音読みしたら「シヨウカ」?これはどうもスッキリしない。
スッキリさせるために紫陽花について調べてみました。

【万葉の時代からアジサイは愛でられていた】

あじさいの語源は、「藍色が集まったもの」を意味する「あづさい(集真藍)」がなまったものという説が有力のようです。

引用「超漢字マガジン」http://www.chokanji.com/magazine/exploration/ex14/

万葉集では2首にアジサイが登場しますが、いずれも「味狭藍(あぢさゐ)」「安治佐為(あぢさゐ)」という字を当てています。

万葉仮名なので、様々な漢字が当てられています。

万葉の時代には、まだ「紫陽花」という漢字は使われていません。
当時の日本では、アジサイと言えばガクアジサイのことでした。
※万葉集/萬葉集は7世紀後半から8世紀後半にかけて編まれた日本最古の和歌集

【「紫陽花」表記の登場】

時代が下って平安時代中期に初めて「紫陽花」の表記が登場します。
平安時代に源順(みなもとのしたごう)が編纂した辞書/百科事典である和名類聚抄(わみょうるいじゅしょう)です。

写真は国立国会図書館デジタルコレクションより
http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/2544225?tocOpened=1

これには「白氏文集律詩に云ふ、紫陽花 和名安豆佐為」と記されており、「白氏文集律詩で紫陽花と書かれてるのは、日本ではアジサイ/アヅサイと言いますよ」と説明されています。

【紫陽花は勘違いから?】

源順が紫陽花についての解説を書く時に、唐の詩人である白楽天の詩に登場する「紫陽花」の特徴を、日本に昔から自生しているガクアジサイと推測し、「紫陽花」の漢字を当てました。
ところが、当時の唐にはガクアジサイはありませんでした。
唐にある、紫の別の花のことを「紫陽花」と記していました。それを源順が勘違いしてガクアジサイの説明に当ててから、「紫陽花」という当て字が広まり、現在に至っているようです。

そしていつの間にか、ガクアジサイを示していた「紫陽花」が、アジサイの意味と捉えられ、ガクアジサイには「額紫陽花」の漢字が当てられるようになりました。

【中国へ、そして欧州へ、再び日本へ】

ガクアジサイは古代に中国に伝わり、中国から欧州に伝わりました。
(中国ではアジサイのことを「斗球花」「绣球花」「八仙花」と表記します。)

欧州で品種改良されたものが、近代になって西洋紫陽花(セイヨウアジサイ)として日本に入ってきました。

ぐるりと世界を回ってきたアジサイも、元々は日本が発祥の地だと思うと嬉しくなってきますね。

【あじさい前線】

さくらの開花日を観測する「さくら前線」は春の訪れを告げる風物詩として有名ですが、国土交通省気象庁ではあじさいの開花日も観測しています。

画像は国土交通省気象庁 生物季節観測の情報より抜粋
http://www.data.jma.go.jp/sakura/data/ajisai2010.pdf

この等期日線図からすると、2018年のあじさい前線は平年より早く北上していますね。

 

気象庁によると、次のように説明されています。

あじさいは暖地の海岸線に自生するがくあじさいの変化したものといわれています。したがって自生するものではなく、主として東北地方中部以南の庭園などに植栽されている落葉低木といわれています。

元々は暖かい地域の海岸線に自生していたガクアジサイが、アジサイに変化し、人の手により植栽されて日本中に広がり、今では夏の訪れを告げる代表的な花となったのですね。

名前の由来、当てはめた漢字の由来が面白い紫陽花ですが、全国で愛でられる花の一つであることは間違いありません。

周りの風景に溶け込んで、ともするとありきたりの植え込みの花のように扱われるかもしれませんが、ふと目にした時にちょっと足を止めて鑑賞してみてはいかがでしょうか。

【まとめ】

およそ1000年も昔の平安時代に「紫陽花」が勘違いから当てられた字だったとは、面白いですね。
梅雨の季節私たちを楽しませてくれる大定番の花、紫陽花。
名前の由来に想いを馳せながら鑑賞するとさらに楽しくなってきます。

※唐の時代の「紫陽花」は、中国では外来植物であったライラックだったと云う説もあります。

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伊東 稔

伊東稔/Minoru ITO 骨盤矯正と姿勢改善の専門家 カイロプラクティック伊東(長野市)院長 兼業主夫でもあり料理好き 『ねこ背を治す教科書』著者 http://amzn.to/2qB9VS2

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