骨盤矯正と姿勢改善が得意なカイロプラクター 伊東稔(@MinoruITO66)です。
目次
喜んで捨てる
「喜捨(きしゃ)」という言葉が好きです。
仏教用語で「進んで金品を寄付・施捨すること」を意味します。転じて、転じて、転じすぎて、「バンバン捨てちゃえ!」の意味と解釈し、パソコンのデスクトップに貼り付けて、日々実践しています。
「捨てるといい事がある」
これは私の実体験でもあり、効果を実感したので多くの人にもすすめたい生き方の一つでもあります。
例えば、私の著書『ねこ背を治す教科書』が誕生する際にそれを実感できました。
キャリア20年のカイロプラクターである私にとっては、ご相談者の「ねこ背を治す」のも「浅い呼吸を深くする」のも、「姿勢をよくする」のも、とても簡単なことです。簡単すぎて当たり前のことなので、その一つをわざわざ一冊の本にまとめ、世のため人のためになるなんて思いもしませんでした。
だって、本当に簡単にできてしまうからです。
簡単にできてしまうことなんか「商売にならない」と思い込んでしまうのが二流の二流たる所以(ゆえん)だと、最近思うようになりました。
誰かにとって当たり前の知識や経験でも、他の誰かにとってはとても知りたいことだったりします。知りたい人に十分な情報をお届けするのは、プロとして大切なことだと思い知らされたのが出版の舞台に立った時でした。
『ねこ背を治す教科書』の誕生秘話の一つにもなりますが、出版企画書の段階では考えすぎて一周回って的が絞られなかったのです。世界中の健康法を詰め込んだようなボヤけたものや、誰もがターゲットになり得る平凡すぎる健康法だったりしていました。
知識や経験を総動員して、その全てを一冊にまとめようとしていた時には、私のてんこ盛りの企画書なんて箸にも棒にもかからないものでした。
『9割捨てて10倍伝わる「要約力」』
山口拓朗著/日本実業出版社
この本の著者である山口拓朗さんに出版企画書を見てもらい、アドバイスをもらえる機会がありました。その3ヶ月後、出版が決まりました。
出版企画書を作るにあたり、いただいたアドバイスの最大の要点は、「誰に」「何を」「どう」伝えるかでした。そしてそのための作業で大切なのが、「とにかく捨てる」でした。
とにかく捨てる
あれやこれやと、夢や理想も織り交ぜながら、「世界最高のコンテンツをふんだんに盛り込みたい」と意気込めば意気込むほど、出版企画書は薄っぺらくつまらないものになりがちです。それよりも、本にして伝えたいことをギュッと要約する方が断然「ささる」企画書になります。
アイデアを書くだけ書き、「せっかく産み出したコンテンツやアイデアを捨てるのをもったいない」と思いながら書き続けている時には、伝えたい事がしっかりと伝えられないただの「羅列」になってしまっていました。ところが、書いたアイデアを惜しげもなく捨てて、捨てて、また捨ててと、削ぎ落とす作業をし始めてから、企画書がどんどん良くなって来ました。
「ターゲット」と「伝えたい事」が絞られてくると、A4一枚の紙にですら、200ページ前後の本の設計図が浮かび出てくるのです。
「ターゲット」と「伝えたい事」が絞られてくると、書店のどの棚にどんな風にその本が陳列されているのかが見えてくるのです。
伝えたい事が要約され、著者(当時は著者候補)にも編集者にも同じ景色が見えた時、出版できるのだと実感しました。
日常生活で、ますます「要約力」が求められる時代
今や誰もがインターネット経由で気軽に連絡が取れる時代です。
はっと気づいた言葉でも、5秒後には相手に伝えることもできてしまいます。
例
常に交流があり、昼夜問わず繋がっていてもいい関係ならばいいでしょう。私的には、家族や親友がそれにあたります。またはドーパミンがドクドクと湧いてくる、お客様からのご予約お申し込みは24時間大歓迎です。
ところが、それ以外の人からの連絡は要点をまとめて頂かないと困惑するばかりです。
例
以下、同じようなやりとりが続く…
はっきり言いましょう。
「私の時間を無駄遣いするな!」
まるでリアルな会話の流れを文章化したようなものです。
LINEで「実は。。。」なんて余白的なものは全く不要だと思います。その一行に何が込められているのか、意味不明すぎてブロックしたくなります。
このペースでのやりとりだと、9割を捨てても良いとすら思えます。
ダラダラと時間の共有をしたい者同士であればいいですが、私はこのようなやり取りは好みません。
送信ボタンを押す前に、「要約」した内容を書いてもらいたいのです。そうすれば、私も気持ちよくお返事を返す事ができます。
例
キュウリがたくさん取れたんだけど、もらってくれます?今から10分後にご在宅ですか?
すっきりとして気持ちの良いやり取りができました。用件をまとめて書いてから送信ボタンを押したので、一目で内容が伝わりました。私の時間を無駄にしない心配りまでもが伝わって来そうです。
手紙が主流の時代、電話やファックスが主流の時代、そしてインターネットが主流の時代と、人と人との連絡手段、通信手段が変化しています。
どの時代にあっても長文を喜んでくれるのは、孫の近況報告を読む祖父母か、好きな人からの好意的なお返事ぐらいです。
読んでくれる人の気持ちになり、要点をすっきりと書いたものは、きちんと伝わり間違いも発生しにくいです。そして何より、相手の読む時間をも配慮していると伝わると嬉しいものです。この伝わる力こそが、本書で紹介されている「要約力」なのです。
時代が要約力を求めている
「要約力」が求められているのは文章だけではありません。会話においても大切です。
ダラダラと、そして延々と続く長いだけのスピーチを誰が聞きたいと思うでしょうか。
昭和の時代から言われ続ける名言があります。
「スピーチと女性のスカート丈は、短ければ短いほど良い」です。
昭和時代であれば、偉い人にスピーチをお願いし、その偉い人が気持ちよくなってもらうための時間であるのが暗黙のルールの一つだったのでしょう。今はそんなことをしたら動画をツイッターに晒されて「このおっさんのスピーチはクソだな」と嘲笑の対象にしかなりません。
「はやく、簡潔に伝える」のが、ビジネスシーンにおいても日常生活においても、必要不可欠な要素であると本書では書かれており、具体例が豊富ですので、誰もがそのシーンを思い浮かべる事ができるでしょう。ぜひご自身にも当てはめて、「要約力」を磨いてください。
私ももっともっと「要約力」を鍛えて、良い文章を書きたいと思いました。
まとめ
誰もが、「自分は普通に伝えたいことを伝えている」と思っていることでしょう。でもそれは妄想にすぎないこともあります。今一度、ご自身の「要約力」を見直して、伝えたいことを伝えたい人に伝わる力を高めていくことをおすすめします。
そうすれば、誤解や不正確さが減り、みんなの利益になること間違いありません。
今回ご紹介した本はこちら
伊東 稔
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